ほんのりと怖い話。

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ザンゾウ

霊感の強い友人いわく
「霊は生前の記憶を繰り返すだけの残像のようなもの」なのだそうだ。

とある踏み切りに、いつも中年のサラリーマン風の男が立っている。
焦点の定まっていない目と生気を感じない表情から、一目見て霊だとわかったらしい。
ぼんやり見ていると警報が鳴り、そこへ通過する列車が。
あっと思う間もなく、踏切内へ飛び込む男。
ぐちゃぐちゃにつぶされる音。メリメリ、て感じの生木を裂くような音に聞こえるんだそうな。
何事もなく、通過する列車。
誰も男が轢かれた事なんか気付かない。見えてないだろうからね。
で、翌日も同じ時間に同じ男が居て、列車に飛び込んでゆく。
これを何度も延々と繰り返している。だから10年近くも同じ光景を目撃し続けていたらしい。
さすがに習慣化してしまうと、最初に見た頃の恐怖なんて無くなってしまうだろう。

ある日、いつものように出勤時間、その踏切を通過した時の事。
何故か後ろが気になって、踏切を振り返って見た友人は、恐怖でド肝を抜かれてしまった。
いつもなら列車に飛び込むだけの男が、まるでビデオテープの早回しみたいな感じの不自然さで、ぞろぞろぞろ、って歩いてきた。
そして、

「なんで止めてくれないんだ?」

って一言。
霊は記憶を再生するだけの残像。という認識は、その日からなくなったそうだ。
イレギュラーな事態に遭遇して、その日は、かなり取り乱していた。
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  1. 2005/08/04(木) 14:46:51|
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